上越国境付近で遊ぶ モグラ駅から谷川岳へ

日本一のモグラ駅、その名は土合駅。夏休みに入った娘と群馬県に遊びに行ってきました。初日の遊び場所、一か所目は「日本一のモグラ駅」という別称で有名な「土合駅」です。

改札口からホームまで徒歩10分!?

この土合駅は上越線という路線に所属しています。上越線とは旧国名での上州国と越後国、つまり群馬県と新潟県を結ぶ路線で、新潟県の「上越」地方ではありません。同様に「上越新幹線」も同じ法則に基づいた命名であり、上越新幹線は新潟県の上越地方を通りません。そして、この土合駅、元々は単線の路線だったので地上に駅舎とホームがあったのですが、高度経済成長に伴って群馬と新潟の間の輸送力を強化する必要に迫られて複線化をしたそうです。そして、その頃には地下トンネルを掘る技術が進んでいたこともあって地下深くにホームを設置したそうです。

地下ホームから改札に行くには、486段の階段を登っていく必要があり、健康な成人男性が休まず登っても10分くらいはかかったそうです。そうですね、ええ、それくらいはかかったと思います。いくらなんでも、もう少し利便性の高い設計にすればいいだろう、という疑問は当然のものでしょうが、地下ホーム開設時の駅の利用者は、そのほとんどが谷川岳を初めとする周辺の山々を登ろうというハイカーがほとんど。

「谷川岳に登るのに、これぐらいの階段で疲れるようじゃだめだろう」と当時の工事関係者が嘯いたとか。いいですね、こういう人を食ったような発言。こういう発言が悪びれもせずに発せられて、言われたハイカーたちも「ウォーミングアップに階段上り競争だ!」とかいう反応を返す空気感、大事だと思います。

なお、谷川岳は標高1977メートルと標高自体はそれほどでもないのですが、遭難死した人の数は世界トップでギネス世界記録に記載ということで「死の山」などというおどろおどろしい異名を冠せられていたりもします。急峻で複雑な地形に加えて、中央分水嶺にあたる三国山脈という位置柄、気候の変動が激しいために、難しいルートで登っている最中にアクシデントに見舞われると、それが致命的な事態を引き起こす可能性があるようです。余談ですが、その昔、新潟県が輩出した首相である田中角栄は、三国峠をダイナマイトで吹っ飛ばすという壮大な計画をぶち上げました。そうすると、日本海の季節風が太平洋側に抜けてくれるために新潟県に雪が降らなくなるという効果が期待できたそうです。その計画の実現性はさておき、そういう逸話になるくらいの気象学的に難しい地域です。

なお、この土合駅、一日の平均乗降客数は20人前後でずっと推移しているようですが、「列車を乗降しないのに階段を登り降りする人間」はその数倍に登ると思われます。つまり、モグラ駅は観光名所です。

さて、季節は盛夏。無人の改札を通り抜けて連絡通路を歩いていると、早くも汗が背中ににじみ出てくるのを感じます。暑い。それなりに標高のある地点であるにも関わらず、暑い。我慢しながら名所である階段までたどり着くと、そこには想像以上の光景が広がっていました。

462階段

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奥の方が見えづらいのは、もしかして靄がかかっているとかそういうことなのでしょうか。一緒に歩く娘に「階段を下りたら、下りた分だけ登らないといけなくなるからね? もう無理、と思ったらやめにして帰ろうね?」と念押しをしますが、娘はなんだか妙に乗り気で「ガンガンいこうぜ!」という感じです。

まさに「潜っていく」感覚

まとわりつくような暑気も、階段を下りて行くにつれて洞窟特有のひんやりとした湿った空気の感触に変わっていきます。涼しいね、と娘に声をかけると、嬉しそうに頷いてどんどんずんずん下っていきます。うっすらと見えてきた終点が徐々にはっきりと見えてくるようになって、歩くこと10分ほど、ようやく土合駅下りホームに到着しました。もう、冷房をガンガンにきかせた部屋くらいの気温。階段を下りて少し進むと、唐突にそこがホームです。

ホームに特に何かがあるというわけではありません。地下鉄を見慣れている人には、特段の感動もないでしょう。

「電車待つ?」と娘に聞いてみたら
「待つ!」とのお返事。
「普通の電車だよ?」
「いいの!」
とモグラ駅に入ってくる電車を見たいご様子。
仕方が無いので待つこと20分。ディーゼルカーですらない都市型の電車が入線してきます。本当に普通の電車です。乗車している人も山登り装備などではなく普通の格好です。当たり前ですが。

「普通の電車だったでしょ?」
「うん(真顔)」
普通じゃない駅に来るんだから普通じゃない電車が来るのだと、やはりどこかで期待していたようです。

山登りとは逆で帰りが登り

電車を見送って、さあ、苦しい苦しい上り階段です。階段を登るごとに、行きとは逆にどんどん気温が上がっていきます。進むにつれて苦痛が増すというのは嫌なものです。娘は隣で元気に462までカウントを続けますが、父親は乱れがちな息づかいをひた隠しに隠すのです。ようやく地上に戻りました。

素敵なアトラクションがあるとか、人生が変わるとか、そういった壮大な経験ができるスポットではありませんが、「地下ホームから改札口まで460段以上の階段を登らないといけない駅に行ってきたよ!」というのはそれ自体、話にネタになるのではないでしょうか。

「谷川岳に行ってきたよ! 絶景だった!」よりも、もしかするとよほど人の食いつきがいいかもしれません。

 

潜った後は登る

続いて谷川岳ロープウェイに向かいます。もぐら駅から谷川岳へのアクセスポイントである谷川岳ベースプラザまでは距離にして1.5kmほど、車で移動するなら5分かかるかどうかというところです。

ある程度の混雑を予想していましたが、夏休みに入ったばかりの平日であるためか混雑はまったくなくスムーズに駐車場に入れました。ハイシーズン(紅葉の時期が特に混み合うそうです)には朝イチでも駐車場にたどり着けないこともあるそうなのでお気をつけください。

6Fのチケット売り場で往復のチケットを購入。大人と子ども一枚ずつで¥3090。クレジットカードの利用も可能です。ただし、天神平から天神峠までの観光リフトは別料金です。

22人乗りのロープウェイも我々親子の貸し切りで、好きなところに歩き回りながら写真を取り放題、双眼鏡を覗き放題、360度の大パノラマが堪能し放題です。ただ、難を言うと風が通らないので室内が暑いこと。

ただ、7月下旬の直射日光が差す密閉空間としては「我慢できなくはない」というほどだったので、いくらか空調は効いていたと思われます。

天神平でロープウェイを下りると、下界とは明らかに違う高原の風が吹いていました。温度も低ければ湿度も低い、さわやかな風です。もうすっかり山の上に来たような気分になりますが、実際には天神平はスキー場の一番下にあたるところでして、眺望もあまりよくありません。しかし、広場にはバドミントンのラケットや羽根、ネットがあったりフリスビーが「ご自由にご利用ください」と置いてあったりして、涼しい高原でレクリエーションには絶好のポイントです。

バドミントン

ここで一つ写真撮影。あまり気乗りがしないようで、なだめてすかして所定の位置についてもらってなんとか一枚、と思ったら、カメラを向けたらなんかいきなりその気になってポーズを取り出す。子どもは不思議。

高原のお嬢様風

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写真撮影が目的である我々はそのまま観光リフトに乗り込みます。スキー場のリフトと同じ造りで、高いところが苦手な子どもは嫌がるかもしれません。ウチの子もあまり気が進まないようでしたが、実際に乗ってみるとそれほど揺れるわけでもなく地上とは違った周囲の植生を楽しむ余裕もでていました。

 

谷川岳天神峠!

天神峠に到着、やはり高いところにくると一気に眺望が開けます。

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展望台から持ち込みの双眼鏡で周囲の景色を楽しんだり(ただし、この地点よりも高い部分が周囲に点在するので「360度の大パノラマ!」は堪能できない)岩場の上り下りをやってみたりとアクティブに楽しみます。

さて、景色がいいだけの山の上など、小学2年生の娘にはなんのありがたみもありません。わたしとしてはもう少し写真を撮っていたかったのですが、娘が「降りよう」と言い出します。また、天神峠にもトイレはありましたが、使用できるのかどうか? という状態であり、あまりキレイではないトイレを激しく嫌う娘が「トイレ」と言い出すと少々困ったことにもなりそうです。

小さなお子様連れの方は、少なくとも天神平でトイレを済ませておいた方がよさそうです。仕方がないので下りの観光リフトに乗ります。

観光リフトは登りは目の前が常に登り坂なので何も見えないのですが、下りのリフトは眼前に開放的な絶景が広がります。吹き上げられてくる風も涼しい! 夏の暑い中に標高の高いところにいることを満喫できます。

下りの方が景色がいいのはロープウェイも同様で、撮影に適しているのはやはり下りです。ただ、ロープウェイは乗り込んだ機体によって窓のキレイさがまったく違うので、機体によっては写真の撮りやすさが違ってきます。こればかりは運次第です。

ふりかえり

この日の宿までの道中に「楽しかった?」と聞いてみたところ、
「楽しかった!」
というお返事。それは良かった。

「もぐら駅とロープウェイとどっちが楽しかった?」
「ロープウェイ!」

この日は草津温泉にお泊まり。おやすみなさい。

草津温泉 湯畑 スローシャッターで

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