自炊で本棚の断捨離

自炊をすると本棚の断捨離ができます。

読書を趣味にしていると、本が再現なく増えていきます。ご経験の方も多いかと思いますが、それはもうものすごい勢いで増えていきます。学生の頃なら、お金がないということが再現なく本が増えることへの歯止めになっていましたが、働き始めてお金に余裕がでてくると、少し気になった本は「とりあえずポチる」ようになってしまいました。その結果、本棚から本が溢れだし、ダンボールに詰め、そのダンボールがどんどん積み上がっていきました。

困るのが引っ越しの時。本が隙間無く詰め込まれたダンボールというのは、やや小ぶりなものでも20kg程度にはなりますし、大きなダンボールともなると30kgを越えてきます。引っ越し業者の屈強な男たちの顔が苦痛でみるみる歪んでいくのを何度も目にしました。

「そろそろなんとかした方がいいかな…?」

この場合の「なんとか」は、もちろん「本を減らす」ことを意味します。何度もそう思いましたが、なかなか実行には移せません。なぜなら、本を減らすというのは、つまり、優先度の低い本を売るなり捨てるなりするということです。売るなり捨てるなりしてしまった本は、もう読むことができません。本を減らす必要を感じながら実行に移せない理由はこれです。

しかし。ドキュメントスキャナを使って本をデータ化する、いわゆる自炊をすれば、いつでも読み返せて、かつ本を減らすことができます。自炊はそれなりに手間がかかって面倒ではあります。その面倒をかけられない本なら、おそらくもう読み返すことがない本ですから売るなり捨てるなりするといいです。わたしの中での分け方は次の通りです。

  • もう一度読み返したい本 → 切って吸って(自炊のこと)保存
  • もっとさらに大切な本 → 自炊した上に本棚の飾りとしてもう一冊購入(本末転倒)
  • どうでもいい本 → 売っておしまい
  • もっとさらにどうでもいい本 → 捨てる

今回は、そんな自炊について、ドキュメントスキャナを買い換えながら本棚の本のほとんどをデータに変えたわたしの、自分なりの自炊のメリットと、これから自炊を始められる方に気をつけていただきたい点をご紹介します。

自炊のメリット

  • 本を減らせる。
    「本棚から溢れてしまった、もう減らさないとこれ以上買えない!」という状況を解決するために捨てたり売ったりするとその本をもう読めなくなってしまう。そう考えてしまうと、よほどどうでもいい本でなければ手放すのに躊躇してしまいます。しかし、データ化すれば、少なくとも「もう読めなくなる」という悩みからは解法されます。
  • 本を持ち運べる。
    自炊作業で作成したPDFファイルはPCで読むのはもちろん、タブレットやスマートフォンでも読むことができます。つまり、事実上、手持ちの本をすべて持ち運ぶことができます。
  • 文章を探せる。
    PDFファイルにした後にOCR処理をしてやることで、”検索”が可能になります。「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」て言ったのはどのシーンだったかな? と疑問に思った時、それが夏目漱石の『こころ』だということさえ分かっていれば、そのファイルを開いて “Ctrl + F” で検索窓を開いて「精神的に向上心」とでも打ち込んでやれば見たいシーンにすぐに行き当たることができます。学術系の本であれば、この点はなおさら便利でしょう。

そのあたりの情報を調べてみた結果、これはありかもしれない、と考えてドキュメントスキャナの導入に踏み切りました。

ドキュメントスキャナとは

普通によく見るタイプのスキャナはフラットベットスキャナといいます。

フタを開くとガラス面があって、ここに読み取りするものを置きます。

読み取りができるのは片面だけです。そして、通常は複数枚をスキャンしようと思うと原稿を手作業で移動させないといけません。100枚200ページの本をデータ化しようと思えば100回の紙の移動と100回の上下反転の作業をしなければならず、200回の読み取り作業が必要になります。

一方、自炊につかうドキュメントスキャナというのは、形状がまったく違います。

シートフィード型といってホルダーがありますので、ここに原稿をセットしておけば、次々に原稿が給紙されていって自動的に読み取っていってくれます。しかも、一度に両面の読み取りが可能です(低価格機や省電力機は除きます)ので、50枚までセットできるスキャナなら、50枚100ページの読み取りが手間なく行えます。内部には読み取り用ユニットが両面にあって、その間を原稿が通り抜けるようになっているために、一度で両面の読み取りが可能になっています。

当然、書籍をデータ化する時に便利なのはドキュメントスキャナです。

始めて知ったドキュメントスキャナは、PFUというメーカーの「ScanSnap S1500」という製品でした。

自炊と電子書籍との違い

一方、自炊で紙の本をデータ化したものと似たものとして、電子書籍というものがあります。本のデータを購入、ダウンロードして手元の端末で読むというものです。本をPCやタブレットで読むというところは共通ですが、何点か違いがあります。

 自炊電子書籍
手間本を裁断してスキャナで読んで処理をして、という面倒がある購入すればいいだけ
品質自分次第、設定次第。ある程度は上げられるが、時々斜めに読み取ってしまうなどのミスも概ね良好
価格古い本では中古で買ってきて自炊すると電子書籍で買うよりも安く手に入る概ね紙の本の定価からいくらか安くなっている程度。時々、セール(10%引きとか50%引きとか)も
利便性・どの端末にもコピーし放題
・PDFファイル内のハイパーリンクがない
・ocr処理を施しても誤認識がありえる
・紐付けできる端末が限定される
・目次や文中のハイパーリンクがある
・書籍内の文字データは完璧(のはず)

電子書籍>自炊である点

  • 電子書籍は買えばいいだけ。自炊は、本を買う、裁断する、読み取る、不要ページを削除するなどのデータ処理、という工程が必要。
  • 品質は概ね電子書籍の方が上です。しかし、中には「なぜこんなに解像度が低い…?」というものや「カバー裏のマンガはどこへいった!(怒)」というようなパターンも。自炊の場合は品質は努力次第です。
  • 電子書籍では目次や文中のハイパーリンクを使えば書籍内のリンクをたどれる(これがとても便利かどうかはともかくとして。行ったっきり戻れなくなった経験ありません?)。自炊でもAdobe Acrobatなどを使えば目次から各ページへ遷移するハイパーリンクを作成できないことはないが、非常に手間がかかる。
  • 電子書籍なら「Ctrl + F」などで適切な検索語をいれてやれば目当てのページをすぐに探し当てられます。論文作成中などにずいぶんお世話になりました。一方、自炊の場合、ocr処理を施すことで画像として読み取ったデータに文字データを埋め込むことができますが、精度は100%ではないため、読み取れなかったり読み間違ったりということがあります。
    「あれー? この本に書いてあったはずなんだけど検索ででてこない…でも絶対この本のはず…確かこのへんのページに….あっ、やっぱりあった!」などということがあり得ます。その部分を範囲選択してやってメモ帳にコピーしてみると、「編」という字を「蝙」として読んでいたり、などということはよくあります。

電子書籍<自炊である点

  • 電子書籍では、紐付けできる端末数が限られてしまって、どの端末にもデータを入れておけるわけではない。また、KindleStoreで買った本とReader Storeで買った本を一緒に管理できないなど別の事業者から買った本を統合できないなどの不便さもある。一方、自炊データの場合はどの端末にもデータを入れておけるため、事実上、持っている本をすべて持ち歩くことさえ可能
  • 特に古い本などでは中古の本を買ってきて自炊すれば、電子書籍で買うよりも安く手に入れられることが多いです。電子書籍の場合、特に人気作は古くても定価売りということもあります。

自炊をしてみる

最初は中古でドキュメントスキャナを購入しました。実際やってみてどうかというのが分からなかったので、まずは初期投資を安く抑えたかったのです。

自炊の下準備

そうして ScanSnap S1500 を購入しました。もちろん両面読み取り可能です。そして、adobe acrobatというソフトが付属していて後々PDFファイルから不要な箇所をページ単位で削除したり、2つのPDFファイルを結合したり、逆に2分割したりといった操作が可能です。

さて。ドキュメントスキャナで書籍をデータ化しようとすると、まずスキャナで取り込みができるように本をページごとにバラバラにする作業が必要になります。この作業を裁断といいます。裁断は裁断機を用意して自分で行うというやり方もあるのですが、わたしは裁断業者に依頼することにしました。というのも、本は本として成形するためにページごとを糊で固定しています。ここを上手に切らないとページがバラけずにくっついたままスキャナに入っていってしまって誤作動を起こしてしまうのです。

また、裁断機自体もそれなりに高価(まともなものを買おうと思うと3万円くらいでした)であったことに加え、裁断機の刃が消耗品で、定期的に交換する必要があるということで、総合的に考えてここは業者に依頼した方が得策だと判断しました。

わたしが裁断を依頼したのは、カットブックプロという大阪の会社でした。文庫・新書とコミックは安く裁断してくれるというプランがあったのですが、100冊以上まとめて以来すると単行本やハードカバーもミックスで安くなるというプランがあり、やたら場所を取る専門書を処分したかったので、まずはこのプランで申し込みました。

箱詰めして発送、その間に100冊分の裁断料金である5000円を指定された口座に振り込みます。すると、発送した日を一日目とすると、3日目には返送されてきました。

本をデータ化してみる

さすが専門業者による仕事というべきか、断面が非常にキレイです。試しに本当にすべてのページがバラバラになっているのか確かめてみましたが、糊が残ってくっついてしまっているようなページはありませんでした。スキャナに50枚ずつ程度をセットして読み取りボタンを押すと、バラバラにされたページが次々とスキャナの中を通り抜けていって、その度に接続したPCにデータになった本が取り込まれていきます。

読み取りだけなら数分もあれば作業は終わります。ここからOCR処理(画像データにソフトウェア処理を施して文字データを埋め込む)があるのですが、そのあたりは就寝時にPCにやらせておいても構いません。そのように作業を繰り返していって、100冊が消えた本棚を見てみると…あまり変わった感じがしません。棚から溢れだしていた本が多少減ったかな、というくらいです。

結局、二つあった本棚のうち一つを処分できたのは何度か業者に100冊の箱を送ってからになりました。

目論見通りあふれ出ていた本はかなり減り、部屋に余裕が生まれました。ただし、「持っているすべての本をスマートフォンに入れて常に持ち歩く」というのはできませんでした。あまりにデータ量が大きすぎて、スマートフォンやそこに差しているSDカードでは容量が足りないためです。しかし、持ち歩く本を選べば解決する問題なので、この点はほぼ期待どおりでした。

思わぬ利点もありました。社内会議などで配られた資料なども、後で必要になるかもしれないということでデータにしておいたことがあったのですが、その資料を作成した担当者ですら無くしてしまった、しかし、その資料が欲しいという人がいた、という時にデータを出してあげて感謝されたということもありました。あと、ビジネスでの活用といえば、もらった名刺をとりあえずデータにしておくと、社外の人と会う時に念のために過去の名刺を検索してみると、それが何年前のことでも簡単に調べられます。「4年前に一度ご挨拶をさせていただいたことがあります」というのをやれます。

これから自炊をする人に

わたしが主に手持ちの本を自炊するのに使った機種(S1500)の後継機種がでています。わたし自身も現在使っている Scansnap iX500 という機種です。

ドキュメントスキャナで読み取りをする時には、いくつかのカラーモードがあります。例えば「白黒」ならデータは非常に小さくなるのですが、「白」か「黒」かの2階調しかありませんので、いくらモノクロの本でもこれで読み取りをしてしまうとデータが飛んで極端に読みづらくなってしまいます。文字だけなら、もちろん読むのに支障がない程度には読み取ってくれるのですが、図表などはディテールが飛んで劣化してしまいます。コミックであれば「白黒」はまったくお勧めしません。

原稿がカラー写真などであればもちろん読み取りも「カラー」で行うべきですが、これはデータが非常に大きくなります。

そしてもう一つ。グレースケールという読み取りモードがあります。モノクロの本はこれで読み取りをしてやると、「白」と「黒」の間に濃淡をつけた多段階の「グレー」を使うことで、データ量を小さく抑えつつ読みやすいように読み取りをしてくれます。さらに副次的な効果として、グレースケールでの読み取りは、古くなってしまって黄バミがでてしまった本にも有効です。グレースケールで濃度を調整しながら読み取ってやることで黄色く変色してしまった紙を白く読み取れるようになるのです。

iX500は「グレースケール」にも対応しており、読み取ったデータを無線でPCに送ったりといった機能が追加されています。もちろん、adobe acrobatも付属です。

なるべくなら新しい機種を使ったほうがいい

当たり前のことのようですが、これには「なんとなく」ではなく、明確な理由があります。いくら型落ちで安いからといって古いドキュメントスキャナを買ってしまうと、今のWindows10などには対応できない可能性があるのです。

例えば Scansnap S1500 くらいならWindows10にも対応するソフトが 公式サイトで提供されていますが、それより古い Scansnap S510 などではすでにWindows10への対応が見送られてしまっています。

PCに詳しい方ならWindows7のマシンを用意して古いドキュメントスキャナを安く運用するといったことも可能かもしれませんが、中古のドキュメントスキャナにはもう一つ注意するべき点があります。

ドキュメントスキャナの消耗部品

プリンターならインクが消耗品だというのは理解がしやすいと思われますが、ドキュメントスキャナにも消耗部品があります。例えば Scansnap iX500 用のローラーセットは8000円弱してしまいます。

おおよそ20万枚取り込みをすると交換が推奨されるようになりますので、本一冊が300ページ(150枚)とすると、おおよそ1300冊ほどスキャンすると交換時期ということになります。これを「1300冊も取り込みできるのか」と考えるか「1300冊で交換か…」と考えるかは人それぞれでしょうが、もし、前の所有者がヘビーな使い方をしていれば、もしかすると交換の必要があるかもしれません。個人的には「満を持して導入したドキュメントスキャナなら50,000枚や100,000枚くらいあっという間」という感覚です。

Scansnapの消耗品の交換時期はPCに接続した状態なら確認できるようになっているので、信頼できるお店ならこうした情報も提供してくれているかもしれません。

読み取り枚数

消耗品がそれなりに高額ですので、中古品店なりメルカリなどのフリマなりで購入を考える際には、少し頭の片隅に置いていただければと思います。くれぐれも、安く済ませられると思って中古を買ったのに、かえって高くついてしまった、などということがないように気をつけてください。

安価なモデルは機能が限定されてしまう

例えば今(2018年8月)なら、新品で1万円台の半ばである ScanSnap S1100 FI-S1100A というようなものもあります。あるのですが、難点があります。

  • 片面読み取りのモデルである
  • adobe acrobat などのソフトがついていない

などです。本は普通、裏表両面印刷されているので、一度で取り込みしようとするなら両面読み取りが必須になるわけで、片面読み取りしかできないこの機種は自炊用としては都合が悪いわけです。

2点目の adobe acrobat とは、PDFファイルの操作に使うソフトウェアです。scansnap organizer などが付属しているので、読み取った画像のPDF変換やOCR処理など最低限の機能はもちろん果たせるのですが、PDFの操作をするなら acrobat があるにこしたことはありません。

もちろんこの機種にも良いところはあります。給電がUSBから可能なため、別にACアダプターなどをつなぐ必要がないということです。外周りの営業さんなどが出先で紙の資料をデータ化する時などには最適な商品ですが、自炊用ではありません。

まとめ

最近は新しく本を買うときはほとんど電子書籍になってしまいました。どうやら電子書籍は完全に根付いたらしいという安心感と、価格面での優遇が決め手になりました。紙の本よりも安くてポイント還元もあって、しかも場所を取らずに自炊をする手間もいりませんので。

ただ、電子化されない本は今でも紙で買いますし、中古店で本を購入することもあるので、そうして数がまとまれば今でも裁断業者に送って自炊しています。

この記事を読んでいただいて、捨てられないけど持っていられない! という悩みが解消されれば幸いです。そして、「買って失敗した!」ということを防げたならなおさら幸いです。

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